"昔々のこと、三人の兄弟がさびしい曲りくねった道を、夕暮れ時に旅していました――" —物語を読み上げるハーマイオニー・グレンジャー [出典]
『三人兄弟の物語』はしばしば魔法使いが子どもたちに語って聞かせる物語である。吟遊詩人ビードルの著作とされており、彼の作品集である『吟遊詩人ビードルの物語』にも収録されている。ほとんどの魔法使いは、この物語は子どもたちに謙虚さや知恵といった教訓を教えるためのおとぎ話だと信じているが、一部の魔法使いは魔法界で昔から密かに受け継がれてきた3つの品々、すなわち“死の秘宝”がこの物語の中で言及されていると信じている。
また、ペベレル兄弟がこの物語のモデルであり、彼らこそ死の秘宝を最初に手に入れた3人の魔法使いだと信じる人々もいる。死の秘宝を3つ集められれば、持ち主は“死を制する者”になると言われる。
物語[]
曲りくねった寂しい道を旅していた3人の兄弟が、泳いで渡ることのできない危険な川に魔法で橋をかけた。しかし半分ほど渡ったところで、『死』が現れて3人に語りかけた。兄弟たちがまんまと危険を回避したことに腹を立てていた『死』は、策を巡らし、3人にそれぞれ褒美をやると告げた。
1番上の兄は戦闘好きだったため、決闘すれば必ず持ち主が勝つような強力な杖を求め、『死』からニワトコの杖を与えられた。傲慢な2番目の兄は『死』をさらに辱めたいと考え、人々を生き返らせる力を求め、死者を呼び戻す力のある石を与えられた。謙虚で賢い3番目の弟は『死』から逃れる手段を求め、透明マントを与えられた。
後日、1番上の兄は強力な杖の力を吹聴し、自分は無敵だと人々に自慢した。しかし1人の魔法使いが眠っている彼を殺し、杖を奪い去ってしまった。一方、2番目の兄はかつて結婚を夢見ていた女性を死から呼び戻したが、死者である彼女はこの世になじむことができなかった。思い悩んだ2番目の兄は、彼女と本当に一緒になるため自らの命を絶ってしまった。
『死』はこうして兄弟のうち2人を自分のものにすることができたが、透明マントを持つ3番目の弟を見つけることはできなかった。やがて3番目の弟は高齢になり、透明マントを息子に受け継がせた後、『死』を古い友人として迎え入れ、自らの意志でこの世を去っていった。
死の秘宝[]
『三人兄弟の物語』で言及されている3つの品は、魔法界に存在する最も強力な品々、すなわち“死の秘宝”だとする説が一部の人々のあいだで信じられている。すなわちニワトコの杖は1番上の兄が手に入れた無敵の杖で、蘇りの石は2番目の兄が手に入れた死者を呼び戻す力がある石、透明マントは3番目の弟が「死」から姿を隠すのに使ったマントである、とする説である。
これら3つの品を全て集められれば“死を制する者”になれるとされている。ゼノフィリウス・ラブグッドやゲラート・グリンデルバルド、アルバス・ダンブルドアといった人々は死の秘宝の存在を信じ、実際に探し求めた。
秘宝の運命[]
物語の主人公である3人の兄弟は、13世紀初頭にイギリスのゴドリックの谷に住んでいた実在の魔法使い、アンチオクとカドマス、イグノタス・ペベレルがモデルとされている。ただし彼らは実際に『死』と遭遇して秘宝を与えられたのではなく、優れた魔法の技術を使い、これらの品々を創り出したものと思われる[1]。
長男であるアンチオクは「ニワトコの杖」を作り、その最初の所有者となったとされるが、彼の杖は戦いによって次の持ち主へ受け継がれる血塗られた運命をたどった。やがてこの杖の所有者となったアルバス・ダンブルドアは、杖を良い目的のために使って歴史を変えようとした。彼の死後、ヴォルデモート卿が新しい持ち主になったものの、杖の完全な所有権を得ることはできず、ハリー・ポッターによって倒された。その後、ニワトコの杖はダンブルドアの墓に戻された。
次男のカドマスが作ったとされる「蘇りの石」は、彼の子孫へと受け継がれ、やがてゴーント家の所有物となった。石はマールヴォロ・ゴーントからその息子のモーフィンへ、そして孫のトム・リドルへと受け継がれ、トムによって彼の分霊箱のひとつにされた。やがて蘇りの石はアルバス・ダンブルドアによって発見され、ハリー・ポッターに譲渡されたが、禁じられた森で失われた。
三男のイグノタスが作ったとされる「透明マント」も彼の子孫へと受け継がれ、孫のイオランテ・ペベレルの代からポッター家の所有物となり、彼女からハードウィン・ポッターへ、最終的にジェームズ・ポッターにたどり着いた。ジェームズが死んだ時マントを借り受けていたアルバス・ダンブルドアは、のちにこの品をジェームズの息子であるハリーに贈った。
登場作品[]
- ハリー・ポッターと死の秘宝 (初登場)
- ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1
- ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1 (ゲーム)
- 吟遊詩人ビードルの物語 (現実世界)
- レゴ ハリー・ポッター 第5章-第7章
脚注[]
- ↑ 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第35章 キングズ・クロス