魔法族は魔法を操る能力を持って生まれたヒトの男女を含めた総称。男性を魔法使い、女性を魔女と呼ぶ。ただし、「魔法使い」という言葉はしばしば「魔法族」と同義で使われることもある。
起源
魔法の起源はまったくの不明である。
魔法の使用
魔法使いと魔女は幼児期に偶発的に魔法を使用することがある。彼らの魔法は成長するにつれて磨かれていき、自分の意志で制御できるようになる。
ほとんどの魔法使いと魔女は魔法を自在に扱うため杖を使用したが、経験を積むことで杖を使わない魔法をマスターすることも可能である。ごく一部の非常に優れた魔法使いのみが、杖を振るうことなく魔法を使うことができた。ハリー・ポッターがホグワーツ魔法魔術学校の1年生の時、アルバス・ダンブルドア校長がこの技術を実際に使用した。また、ヴォルデモート卿も1997年の7人のポッターの戦いで杖を使わない魔法を使用した。
遺伝
通常、魔法能力は親からその子へと引き継がれる。魔法の遺伝子は顕性で回復性を持つ。マグルの血をひかない魔法族の両親から生まれた魔法族を「純血」、すくなくとも片親がマグルの血を引く魔法族の場合を「半純血」と呼び、非魔法族の両親から生まれた魔法族を「マグル生まれ」と呼ぶ。
純血至上主義者はすぐれた魔法族の家系にマグルはひとりもいないとしばしば主張したが、純血、半純血、マグル生まれの能力と生理機能に違いはみとめられない。
少なくとも片親が魔法族でありながら魔法能力を持たない者は「スクイブ」と呼ばれる。マグルから魔法使いが生まれるのは、先祖にマグルと結婚したスクイブがいるからである。魔法家系から分岐した一族はしばしば魔法界との繋がりを失い、後世になって多数のマグル生まれを輩出することになる。
生理
魔法族はマグルとは異なる生理的特徴を有していた。そのため魔法生物との接触(e.g.マートラップによる攻撃)においては異なる反応を示す。また、特定の魔法や魔法的障壁(e.g.マグル避け呪文)に騙されることもなかった。
魔法族はマグルと異なり「ありふれた」障害(e.g.骨折、サソリ毒)と病気(e.g.インフルエンザ)に対する優位性を有していた。ただし忘却呪文の暴発や許されざる呪文をはじめとする闇の魔法などの魔法によって生じた損傷は恒久的なものになる可能性があった。
前時代的な衛生状態にも関わらず、魔法族はマグルに比べておそらく健康であった。魔法族はマグルが苦しむあらゆるありふれた障害と病気から自分たちの身を守ることが可能である。
寿命
魔法省によれば、イギリスの魔法族の寿命は1990年代の半ばに137年と9か月に達していた。また、記録上最高齢の魔法使いは755歳(1991年時点)である。魔法使いはマグルよりもはるかに長生きであり、マグルの2倍、3倍、場合によってははそれ以上長生きする者もいた。
くわえてジェームズ・ポッターは両親が晩年にさしかかったころに出生した子供であることを鑑みると、魔女の出産年齢はマグル女性より長い可能性が高い。
亜種
魔法使いの中には、生まれつき(あるいは後天的に)特殊な能力を持つ者もいる。
予見者
平均的な魔法使いを越える先天的な能力の持ち主として、「予見者」が挙げられる。予見者は未来のできごとをあらかじめ見通す能力を持つ。彼らは未来のビジョンを見ることもあれば、お茶の葉やタロットカード、水晶玉といった物体を通して未来を占うこともある。著名なカッサンドラ・トレローニーやその曾々孫のシビル・トレローニーが予見者として知られる。ただし、「占い学」の分野は魔法界でも特に難解な学問とされ、真の予見者はほとんど存在しないとされている。ちなみに、魔法使い以外にも未来を予見する技術を持つ生物は存在する(例:ケンタウルス)。
動物もどき
魔法使いや魔女の中には動物に姿を変える能力の持ち主がいるが、これは先天的な能力ではなく、訓練によって得られる技術である。この技術を身につけた魔法使いは動物もどき(アニメーガス)と呼ばれている。古い『吟遊詩人ビードルの物語』の登場人物であるバビティ兎ちゃんも動物もどきだとされている。ホグワーツ魔法魔術学校のミネルバ・マクゴナガル教授はネコに変身する動物もどきだった。記録されている最初の動物もどきはタカに変身するファルコ・イーサロンである。
変身能力の悪用を防ぐため、動物もどきは魔法省への登録を義務付けられている。しかし、中には未登録の動物もどきも存在した。例えば、牡鹿に変身したジェームズ・ポッター、巨大な黒い犬に変身したシリウス・ブラック、ネズミに変身したピーター・ペティグリュー、ハエに変身して情報を収集していたリータ・スキーター記者らは未登録のまま活動していた。ジェームズ、シリウス、ピーターは、狼人間の友人リーマス・ルーピンを助けるために動物もどきの能力を身につけた。また、ピーターはこの能力を悪用して自分が死んだように見せかけ、ウィーズリー家のペット「スキャバーズ」になった。
七変化
また、体の基本的な構造ではなく外見上の特徴だけを変える能力の持ち主もいる。この能力の持ち主は「七変化」と呼ばれる。七変化は鼻の形や髪の毛の色、その他の特徴を自由に変えることができる。ニンファドーラ・トンクスやテディ・ルーピンは七変化である。
動物との意思疎通能力
魔法使いや魔女の中には、動物と会話する能力の持ち主がいる。例えば、パーセルマウスと呼ばれる人びとはヘビと会話することができる。パーセルマウスは極めてまれな能力である。サラザール・スリザリンは悪名高いパーセルマウスで、その子孫であるマールヴォロ・ゴーントやモーフィン・ゴーント、ヴォルデモート卿も能力を受け継いでいた。ハリー・ポッターもパーセルマウスだったが、これは彼の中に宿るヴォルデモートの魂が原因で身についたものだった。ヴォルデモートの魂が破壊された際、ハリーはヘビと会話する能力を失った。他にもルビウス・ハグリッドのように、あらゆるタイプの動物とコミュニケーションをとり、親しくなる能力を生まれつき備える者もいる。また、動物もどきは変身中に他の動物とある程度の意思疎通がとれた。
スクイブ
両親または片方の親が魔法使いや魔女であるにもかかわらず、11歳を過ぎても魔法を使うことができない人物はスクイブと呼ばれる。スクイブはいわば「魔法使い生まれのマグル」で、マグル生まれの魔法使いよりも数が少なく、極めて珍しい存在である。魔法使いや魔女(特に純血の人びと)の中にはスクイブを差別する者たちがいる。
遅咲きの魔法使い
魔法使いの家庭に生まれ、11歳を過ぎても魔法を使えない者の中には、絶望的な状況に置かれることで自発的に魔法能力を発揮する者もいる。ただし、こうした人物はおそらくスクイブよりもさらに稀である。
開心術士
開心術士とは開心術を使うことができる魔法使いや魔女である。開心術士は他者の感情や記憶を引き出すことができるが、閉心術の心得がある者の精神を読むことは困難である。開心術はマグルの世界でいう読心術に相当するが、厳密には異なる技術である。
閉心術士
閉心術士は閉心術を使うことで心の内を守り抜くことができる。ホグワーツ校のセブルス・スネイプ教授は5年生のハリー・ポッターにこの技術を教えた。
社会
魔法使いと魔女は独自の文化と伝統を持っているが、国際魔法使い連盟の規約に従い、自分たちの社会をマグル社会から隠している。魔法使いは地球上のさまざまな地域に住んでいる。1994年に開催されたクィディッチのワールドカップには100,000人を超える魔法使いの観客が集まった。ホグワーツ魔法魔術学校には数百人の生徒が在籍し、学校内の寮で生活している。
魔法使いと魔女の全人口は明らかではないが、いくつかの手掛かりから大まかな数を出すことができる。たとえば、マグルの全人口は魔法使いの10倍だと言われている。マグルの全人口が50億人(1990年代)だとすれば、魔法使いの全人口は5億人ということになる。しかし、イギリスの魔法使い人口はおよそ3,000人と言われている。以上の事実から、魔法使いの出生率が非常に低いこと(ただし魔法使いの寿命はマグルよりも長い)がわかり、また、イギリス以外の国は魔法使い人口が多い可能性、もしくは世界のどこかに魔法使い人口集中地点が存在する可能性が示唆される。もっとも、マグルの人口が魔法使いの10倍というのが過大評価で、イギリスの魔法人口が3,000人というのが過小評価に過ぎない可能性もある。
魔法使いはしばしばコミュニティを形成して生活する(例:ゴドリックの谷やホグズミード村)。また、スピナーズ・エンドやグリモールド・プレイス12番地のような他から離れた場所に住む魔法使いもいる。魔法使いのほとんどはマグルと接点を持たず、マグルの存在を歓迎しない者が多い。魔法使いはマグル界に関して無知だが、マグルが魔法界について無知であるのとは少し事情が違う。マグルが魔法界の存在を全く知らないのに対し、魔法使いはマグルの存在を知ったうえで、彼らに対して興味を持たなかったり、特定の一面(例えば電気や先進技術)を知らないだけだからである。
魔法使いや魔女の中には、親戚にマグルがいることを口外せず、時にはその存在を否定する者もいる。ヴォルデモート卿はマグルの関係者を殺害した。しかし、アーサー・ウィーズリーのようにマグルに対して強い興味を示す魔法使いもいる。マグル生まれの魔女、ハーマイオニー・グレンジャーは、魔法使いの視点から見たマグル像に興味を持ち、ホグワーツで選択科目のマグル学を受講した。