"僕、少しなら知ってます。算数とか、そんなのだったら」
「我々の世界のことだよ。つまり、おまえさんの世界だ。おれの世界でもあるし、おまえさんの両親の世界のことだ" —ハリー・ポッターとルビウス・ハグリッド [出典]
魔法界、ウィザーディング・ワールド(Wizarding world)、別名魔法コミュニティ(Magical community)は魔法使いと魔女の社会である。呪文を用いることで非魔法族であるマグルの社会から分離され、その秘密を保っている。魔法使いが魔法に関する情報をマグル社会に漏らすことは、国際魔法機密保持法で禁じられている。世界各国には、それぞれの領土の魔法情勢を監督するための政府(魔法省や魔法評議会)が設置されている。魔法界の国際的な政府機関として、国際魔法使い連盟が存在する。
魔法使いは魔法能力を磨き、学び、学校で訓練を受けるが、マグルが魔法を習得することはできない。魔法は料理や掃除、旅行、通信、育児、医療といった幅広い分野で使用されている。そのため、鍵開け呪文を使わずヘアピンでピッキングするといった非魔法的な技術は、魔法界ではほとんど知られていない。また使用例を見る限り、魔法そのものは道徳的に中立的で、魔法使いの善意や悪意が呪文に反映されるようである(例えば、磔の呪文が効果を発揮するのは、使用者が相手に危害を加えたいと願っている場合だけである)。魔法のおかげで先進技術を使う必要がなく、魔法が電化製品に干渉するという事情から、魔法界で使用されているテクノロジーの外見は中世的である。例えばホグワーツ魔法魔術学校では昇降機の類が使用されず、代わりに階段が使われている。
政府
魔法省はイギリスの魔法界の法律を施行する中央機関である。魔法省には数多くの省庁があり、極めて効率的に組織化されている。魔法省の最高責任者は魔法大臣である。政治上、魔法省は立法府、行政府、司法府すべての役割を担っていた。大臣は選挙制だったが、選挙権が誰に与えられるのかは不明(一般の魔法使い人口からの投票が行われている模様)。大臣の任期は特に定められていないようである。知られている最長の任期は、ファリス・スパーヴィン大臣の38年(1865年~1903年)である。
魔法法に違反した犯罪者の裁判は、魔法省のウィゼンガモット法廷と魔法法評議会が担当する。裁判は短い質疑応答によって行われ、裁判官や仲裁人はおらず、上訴の制度も存在しない。有罪となった犯罪者は罰としてアズカバン刑務所に送られることがある。冤罪で不当にアズカバン送りとなった場合(シリウス・ブラックの例など)、ウィゼンガモットは謝罪の意を表明するものの、それ以上の事はしない。
魔法省は通信、輸送、魔法使いと他の魔法存在間の内政、魔法界の安全の維持、取引禁止品目の監督、ゲームやスポーツなど、魔法界の生活のさまざまな側面を管理運営している。
国際魔法機密保持法
マグルから魔法界に関する情報を隠蔽する活動には、非常に大きな努力が費やされている。マグルに対して魔法を使ったり、未成年の魔法使いが許可なく魔法を使うことは禁じられており、魔法に関する情報漏えいはどんな些細なことでも処罰の対象となる。この取り決めは国際魔法機密保持法に定められており、魔法省と国際魔法使い連盟によって施行されている。
魔法省はマグル政府からの質問に一切答えることはないが、魔法大臣にはマグル界に影響を及ぼしかねないできごと(たとえば危険な犯罪者の脱獄や、極めて危険性の高い魔法生物の輸送など)をイギリス首相に報告する義務があった。また、魔法使いの家族を持つマグルも、機密保持の例外となる。
地理
グレートブリテン
魔法界の用語でいうグレートブリテンは、マグル界とは異なり、イギリスの島すべて(イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランド全域)を包括しているようである。イギリス魔法省(およびその教育機関ホグワーツ魔法魔術学校)の権力はこれらの地域全体に及んでいる。ただしクィディッチの協会はマグルのスポーツ協会と同様、各地域に個別に存在しているようである。魔法使いは世界中の各地に居住しているが、魔法使いの村もいくつか存在し、そこでは大勢の魔法使いが非魔法族の一切いない居住区で固まって生活している。ホグズミード村はグレートブリテンで唯一住民全員が魔法使いの村である。ゴドリックの谷やオッタリー・セント・キャッチポールといった村には、マグルから隠された魔法使いのコミュニティが存在する。
イギリスでは、魔法省、聖マンゴ魔法疾患傷害病院、商業施設街ダイアゴン横丁といった魔法界の中央施設がロンドンに集中している。仕事、治療、買い物のためにこうした施設を訪れる際、魔法界の人びとは魔法を用いた移動手段を利用するため、離れた場所に住んでいても問題ない。イギリスでは、西部地方やスコットランドの高地に魔法使いや魔女の人口が集中しているようである(これらの地方はマグルの標準からみて辺境に位置し、比較的人口がまばらであるため、機密保持法を守るのが容易であることから居住地に選ばれやすいのかもしれない)。
その他の国々
魔法界の世界地図はマグル界のそれとは異なる。魔法界でいう「グレートブリテン」(アイルランドを含めたイギリス諸島全域)と同様、必ずしも魔法国家の境界線が現代のマグル国家のそれと一致するとは限らない。たとえば、魔法界ではマグル界と異なりフランダースやトランシルバニアが独立国として存在する。また、同名のマグル国家が存在するルクセンブルクやリヒテンシュタインといった国々は、魔法界で政治やスポーツの領域に大きな影響力を及ぼしている。そのため、こうした魔法国家は同名のマグル国家よりも領土が広い(もしくは魔法使い人口が多い)可能性がある。
魔法国家はそれぞれ魔法省(もしくはそれに相当する組織)を設置しているようで、各国の連携を図るための国際機関、国際魔法使い連盟が存在する。各国の魔法政府は国際的な魔法法の施行を監督し、イギリス魔法省の場合、省内の国際魔法協力部に国際魔法使い連盟イギリス支部を設置している。また、国際魔法使い連盟クィディッチ委員会がクィディッチに関する国際問題を担当している。